東北放射光施設利用推進室(SLiT-J)

放射光を利用した主な測定技術

Column: 放射光で見えるようになるナノ

SLiT-Jは、東北がデザインした新しい放射光施設の計画です
10年前までの放射光施設では、ミクロンサイズ(μm)に光を絞って、ミクロン領域の観察する研究が主流でしたが、 数年前より、SPring-8(日本)では100ナノメートル(nm)サイズの光を使った「ナノ・アプリケーション」が標準的な観察技術として利用されるようになりました。

これらの観察技術は、ナノデバイスの詳細観察や、レアアース(希土類元素)を使わない磁石の開発などに応用されています。

このような光の進化は、フードサイエンス分野やスピントロニクス分野など、他の分野においても、それらの市場を飛躍的に拡大させるような可能性を秘めていることから、 放射光施設は社会ニーズに応える科学(Social-Needs Science)の場としての期待が世界的に高まっています。

しかも、世界では続々と新しい放射光施設が実際に建設され、その分解能はシングルナノメートルサイズに迫りつつあります。 この高い分解能と多様な計測手法を利用し、ナノからミリサイズのマルチスケールで測定した情報を元に先端研究や技術開発を行うのです。それら世界の新しい放射光施設の一部は既に稼働を始めています。
例えば、2016年6月に利用が開始されたスウェーデンのMAX-IVも、放射光を使ってナノの世界を明らかにすることをテーマとしています。 MAX-IV解説CGアニメ動画

放射光を利用した主な測定技術

放射光を利用した測定では、単にものを拡大して見るだけでなく、 元素を識別したり、化学結合状態を調べたり、磁気的性質を可視化したり、様々な測定手法が利用できます。以下は主な測定技術の紹介です。
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X線タイコグラフィ
(XPG : X-ray Ptychography)

  • X線の位相差を利用し、物質の内部構造を高分解能(10nm程度)3Dイメージング
  • 薄い試料や軽元素で構成される試料(生態軟組織など)に対して有用
  • X線のエネルギーを選択することにより、元素選択的な分析が可能
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X線コンピュータトモグラフィ
(XCT : X-ray Computer Tomography)

  • 透過X線から求められる吸収係数から、試料の内部構造を3Dイメージング
  • 非破壊検査であり、試料の特別な前処理が不要
  • 大強度・高エネルギーX線による金属等の高密度試料への適用
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X線吸収端近傍構造
(XANES : X-ray Absorption Near-Edge Structure)

  • 物質中の特定元素周辺の化学状態、構造の対称性に関する情報が得られる
  • 測定手法が比較的簡便であり、結晶および非晶質を問わず有効
  • 高輝度の放射光を用いた希薄試料の分析・反応のその場観察への応用
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広域X線吸収微細構造
(EXAFS : Extended X-ray Absorption Fine Structure)

  • 物質に含まれる元素周囲の構造情報(結合原子の種類・距離)を選択的に分析
  • 試料形態に制約が少なく、非晶質や液体および気体の分析も可能
  • 数十ppm程度の希薄試料も分析可能
  • 高輝度放射光によるダイナミクス観察(in-situ operant-EXAFS)
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蛍光X線分析
(XRF : X-Ray Fluorescence Spectroscopy)

  • 高い精度で試料に含まれる元素の定性・定量分析が可能
  • 簡便な測定手法であり、蛍光X線スペクトルの解釈は比較的容易
  • マイクロビームを用いた高分解能マッピングによる元素分布のイメージング
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光電子分光法
(XPS : X-ray Photo Electron Spectroscopy)

  • 物質表面に含まれる元素の定性、定量分析および化学状態の分析
  • 水素、ヘリウムを除くすべての元素を分析対象とすることができる
  • エッチング装置と併用することで深さ方向の元素分布イメージングが可能
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X線光子相関分光法
(XPCS : X-ray Photon Correlation Spectroscopy)

  • 試料中のナノメータースケールの構造ゆらぎに関する情報を時分割測定
  • 有機材料の高次構造など、ソフトマターの動的構造変化の分析に有効
  • 高輝度のX線により、不透明・高密度の試料にも対応
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角度分解光電子分光
(ARPES: Angle-Resolved Photoemission Spectroscopy)

  • 高い表面敏感性を持ち、材料の表面や界面における電子状態解析に有効
  • 物質の電子バンド構造が決定でき、材料物性の起源と発現機構の解明に貢献
  • スピン分解測定により、磁性などの電子スピンの関与する物性の解明に有力
  • 量子デバイスやスピントロニクス材料の探索と開発に威力を発揮
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光電子顕微鏡法
(PEEM : Photo Electron Emission Microscopy)

  • 二次電子検出による試料表面の高分解能イメージング
  • XPS, XANES の併用により、極微小部分の同時分析が可能
  • 有機薄膜材料および磁気イメージングへの応用
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X線磁気円光二色性
(XMCD : X-ray Magnetic Circular Dichronism)

  • 円偏向X線の吸収スペクトルから、磁気特性に関する情報を得る
  • 表面の磁区構造イメージング・磁気モーメントの定量化
  • X線のエネルギーを選ぶことによって元素選択的な分析が可能
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フォトルミネッセンス
(PL : Photoluminescence)

  • 紫外~可視光領域における発光特性から、内部の欠陥に関する情報を分析
  • 半導体試料の欠陥評価、蛍光物質等の発光特性評価に有用
  • 非破壊検査であり、試料の特別な前処理は不要
  • マイクロビームを用いた高分解能マッピング・光化学反応のダイナミクス観察
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X線小角散乱
(SAXS : Small Angle X-ray Scattering)

  • 物質内部のナノスケール構造(空孔、結晶配向性等)に関する情報を分析
  • 液体・気体の構造およびこれらによる粒子の分散状態も評価可能
  • 有機高分子などのソフトマターおよび非晶質物質の高次構造の評価に有用
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X線反射率測定
(XRR : X-ray Reflectivity Measurement)

  • 反射X線の減少率から試料表面の表面粗さ、密度等の情報を得る
  • 非破壊に薄膜・多層膜の深さ方向の内部構造を簡便に得ることが出来る
  • 結晶性の有無を問わないため、有機薄膜材料等の評価にも有用
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広角X線回折
(WXRD : Wide-angle X-ray Diffraction)

  • 結晶試料の原子配列に対応したX線回折パターンから原子レベルでの構造情報を得る
  • 未知試料の同定、定量分析や三次元原子配列の決定に有効
  • 薄膜試料の構造評価や残留応力の測定等、応用は広範囲に渡る
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広角X線異常散乱
(WAXS : Wide-angle Anomalous X-ray Scattering)

  • 吸収端近傍でのX線回折測定WXRDにより特定元素周囲の構造情報を選択的に分析
  • 非晶質・結晶を問わず適用可能であり、複雑な組成をもつ物質の構造解析に有効
  • 小角散乱、単結晶構造解析など他のX線回折測定との組み合わせ
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斜入射X線回折
(GIXD : Grazing Incidence X-ray Diffraction)

  • 試料表面・界面から数ナノメーターの範囲における原子配列の情報を得る
  • 通常のWXRDとの併用で、表面・界面とバルク構造を区別した分析が可能
  • 有機分子や高分子などの薄膜の構造評価にも有用
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